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相続登記をしないと、何十年後かに「相続するつもりのなかった人」が困ることがあります

公開日:2026年8月14日
更新日:2026年8月14日

相続相談なら香川県高松市「ひろせ司法書士法人」司法書士・行政書士の廣瀬修一です!

「相続登記をしないと、どんなことで困りますか?」

相続の相談を受けていると、よく聞かれる質問です。

一般的には、

  • 不動産を売却できない
  • 不動産を担保に入れられない
  • 相続人が増えて手続きが複雑になる

といったことが挙げられます。

もちろん、どれもそのとおりです。

ただ、実際の相談を受けていると、もう一つ知っておいてほしい問題があります。

それは、「自分はその不動産を相続したつもりがない」という人が、何十年も経ってから突然困るケースがあるということです。

実は、近年、このような相談が増えています。

「長男が相続するもの」と家族みんなが思っていた

例えば、こんなケースです。

父親が亡くなり、相続人は長男とその兄弟でした。

父親名義の実家について、家族の間では、「実家は長男が継ぐもの」
という認識でした。

兄弟たちも特に異論はありません。
長男もそのつもりでした。
ところが、遺産分割協議書を作ったわけでもなく、相続登記をしたわけでもありません。

昔は、こういうことが珍しくありませんでした。

「長男が住んでいるんだから、長男のものだろう」
家族の中では、それで話が終わっていたのです。

そのまま数十年が経ち、長男も亡くなった

その後、何十年もの時間が経過しました。

兄弟同士の付き合いも次第に薄くなり、それぞれ別の生活を送るようになります。
そして、実家を継いだと思われていた長男が亡くなりました。

長男は独身で、子どももいません。

ここで問題が起こります。

父親が亡くなったときに、きちんと遺産分割協議をして長男名義への相続登記をしていれば、実家は長男の財産です。

しかし、何も手続きをしていなかった場合、法律上の権利関係は必ずしも家族が思っていたようにはなっていません。

「長男が相続したつもりだった」という家族の認識と、法律上の権利関係がズレたまま、何十年も放置されていたわけです。

ある日突然、市役所から通知が届く

そんな状態で、実家が老朽化していきます。

誰も住んでいない建物は傷み、屋根や外壁が崩れそうになっている。

すると、ある日突然、親族のところに市役所などから連絡が来ることがあります。

「建物が倒壊する危険があるので対応してください」
あるいは、
「固定資産税について確認してください」

といった内容です。

連絡を受けた側からすると、
「えっ? あの家は長男が相続したんじゃないの?」

という話です。

自分は何十年もその不動産を使っていません。
家賃をもらったわけでもありません。
財産として利用したこともありません。

それどころか、存在すら忘れかけていた。

それなのに突然、自分が相続人として関係することを知らされるのです。

「それなら相続放棄します」は簡単ではない

こういう相談でよく出てくるのが、

「そんな不動産はいらないので、相続放棄できますか?」
という質問です。

ところが、相続放棄はいつでも自由にできるわけではありません。

原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。

もちろん、事情によっては相続開始から長期間が経過していても相続放棄が認められる可能性はあります。

しかし、「何十年経っていても、いらなくなったら相続放棄すればいい」という制度ではありません。

しかも、長い年月が経っていると、当時の事情を知っている人が亡くなっていたり、資料が残っていなかったりします。

相続関係そのものが複雑になっていることもあります。

もっと早く整理しておけば簡単だった問題が、時間が経つことで一気に難しくなってしまうのです。

相続登記は「不動産をもらう人」だけの問題ではありません

相続登記というと、
「不動産をもらった人が、自分の名義にするための手続き」
と思われがちです。

確かに、不動産を取得した人にとっては、自分の権利を明確にするための大切な手続きです。
一方で、不動産を取得しない人からすると、

「私はもらわないんだから、登記なんてしなくても困らない」

と思うかもしれません。
実際、すぐには困らないことも多いです。

だからこそ、問題が長期間放置されます。

しかし、遺産分割や相続登記をきちんと済ませることには、もう一つ意味があります。

「この不動産は誰が取得したのか」を確定させ、それ以外の相続人を将来の権利関係から切り離しておくことです。

これは、不動産を取得する人のためだけではありません。

不動産を取得しない人にとっても、自分や自分の子どもたちが、何十年後かにその不動産の問題に巻き込まれないための手続きなのです。

「家族みんな分かっているから大丈夫」が一番危ない

相続が発生した直後は、家族全員が事情を分かっています。
「この土地は兄さんがもらう」
「実家は長男が継ぐ」
それで誰も争っていなければ、わざわざ書類を作らなくても大丈夫なように感じます。

でも、その「みんな分かっている」は、20年後、30年後には通用しません。

当時のことを知っている人が亡くなれば、その子どもたちには事情が分かりません。
さらに相続が発生すれば、関係者はどんどん増えていきます。
家族の中では当たり前だった話も、次の世代にとっては「聞いたこともない土地」の話になってしまいます。

相続登記は、単に名義を書き換えるためだけの手続きではありません。

今の世代で決めたことを、きちんと法律上の権利関係として確定させ、次の世代に問題を残さないための手続きでもあります。

相続登記をしないことで本当に困るのは、不動産をもらった本人だけとは限りません。

何十年後かに、
「そんな土地、私には関係ないと思っていました」
という人が困ることがあります。

だからこそ、相続が発生したときに、

「誰がこの不動産を取得するのか」まできちんと決めて、相続登記まで終わらせておく。

それが、将来の親族に余計な負担を残さないためにも大切なのです。